内容において大切な事は共通している
では次に童話作家として必要な、作品制作について話をしていこう。こちらについては大まかな主軸となる展開については、一般的な書籍とさほど変わらない。何より大切なのは起承転結がしっかりしていなければならない、これはどんな物語であっても、どんな内容であったとしても重要な部分だ。物語の骨組みとも言える部分が脆く、崩れやすいのでは話として纏めることも出来ない。子供を主力読者とする童話だからといっても、手を抜いてはいけない。むしろ子供のほうがそうした手抜きをすぐに見抜いてしまうといった、そういったことがあるかも知れないからだ。
大人でもたまに読み進めていくと物語の展開次第によっては誰がどうなるか、エンディングがどんな結末を迎えるのかという予想を立てられてしまう。それでは読む楽しみが奪われてしまい、人によっては二度と読みたくないと思わせるような現象を引き起こしてしまうかもしれないのだ。一度読まれたら次は読まなくてもいい、こうした考えのもと制作している作家はいないだろう。少なからず何度目かは気になって何度も読み返したいと思う作品であってほしいと思うのは当然とだろう。
読まれないと言うのは一言で言ってしまえば、それだけひどい話なのかもしれないし、単に何を言っているのか理解できないという場合もある。作品は読み手が違えば全く別の世界観へ変貌する、だが童話といえど読み方や内容の捉え方で全く違う話が出来上がる。それも楽しみだが、やはり基本的な部分がしっかりしていなければ身も蓋もない。
起承転結のコツ
では具体的かつ、簡略的に童話を制作する際に必要なポイントなどを抑えつつ話をしていこう。
まず最初に、何と言っても『起承転結』がしっかりと機能している事だ。このシステムはどんな物語にしても軸足は決まっている、その軸足を頼りに物語をどのように運ばせていくかを決めていかなければならない。ましてや高学年以下、それも幼稚園生を対象とした童話になれば、文章はあまり長くは出来ない上、内容なども技巧的といった創意工夫を施すといった複雑怪奇性は一切求められないと考えるべきだろう。また一文ごとの長さもできるだけ短くするといったように、大人が読むことを前提にしていない、純粋に子供が見るために作らなければ、絵本は出来上がらない。
童話も起承転結がしっかりしていなければならないのだが、ここで少しポイントなのが起承転結の『承』を繰り返し表現するというやり方をすることで、童話の世界観を重厚なものに出来る。こうすることで作品全体に独特なリズムを生み出し、最後まで飽きることなく読める作品にしようという取り組みも内包しているため、やり方次第では色々な仕掛けを見繕う事もできるため、童話作家としての本領が試される瞬間だ。
また童話にありがちなのが、音を言葉にして表現している手段にしても非常に有効だ。擬音や効果音といったものも文の一部として取り入れることにより、物語全体に箔が付けられる。遠回しな言い方が好きという癖もあるかも知れないが、あくまで子供視点で考えるとダイレクトに音で表現するのも童話作家として物語構成には必要な技術となっている。
エンディングは余韻をもたせる
こうしてみると起承転結の、転まではどこか間延びしたような独特な雰囲気が醸し出されるが、対して結にあたるエンディングについてはなるべく余韻をもたせるようにしたい。物語をあっさりと完結させるのは簡単だが、それがかえって子供には少し物足りないと感じる時もある。そうならないようにする手段として、物語が緩慢になりすぎないよう、緩急豊かにしながら進めていって、最後に向けた結末の先にある、誰も知らない童話の世界を想像させるというのも作家として生きる人全てが共通して求めているエンディングの構図だ。
そこまで導くためにも容易周到、鋭意工夫が必要不可欠になるわけだが、それを成し遂げるのも作家として腕の見せどころだ。
擬人化という方法
また童話によくある設定として、本来は人の言葉を話せない動物や物が喋るといった設定についても童話ならではと言える。童話においてそうした設定を用いることで、より豊かな想像力を働かせるといった働きかけを促す。
但し注意点として、擬人化するに際して物語に沿った性格や発言をしていなければならない。あまりに突拍子な物を書いてもそこだけに注目が集められて物語のバランスを崩してしまう、個性的だが壊されない程度に留めて設定する、言葉にすれば簡単だが実はとても難しいことだ。これが簡単にできるという人がいたらある意味、本物といえる。実際に存在していないからこそ、そこから先は作家本人の世界観で全てが左右される。どのようにして多くの子供達に理解を得られるか、どうしたら良いのかという疑問もあるだろうが作家だからこその命題だからこそ悩まなければいけない問題だろう。